腰を引くやゐなや
その刹那、
彼は腰に刺さつた
その刃で、


切つた
切つた
切たのだ


きつと彼の目に映る
すべての物を
切つたのだ


みるみるうちに
染まつていつた



赤紅朱



そのとき私はどふしたか
笑つてくれよ

私も切つたのさ
いのふへと一緒に

目に映るすべての物を
切つた、切つたさ



あんな赤を見たのは
初めてだつたのさ

興奮して狂つて
叫んで乱れて
そして、


いのふへは姿を消した


何も残さず
いのふへは姿を消した

ただひとつ
残したものはとゐえば


残り香と赤


それさへも
真夜の月へと
さらつてゐつたが







十六夜月にて


残り香に うそを残して 赤を見ゆ
しぶきは真夜の 十六夜月にて








それから3日後に
いのふへは還つてきた



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