しん、とする空気。何故だろうか。祭が終盤に近づくといつもこの空気が漂いはじめる。煩い祭の音は聞こえず、ただ周りを取り巻く空気は澄んで、そしてしんとしていた。気のせいか、否か。思い過ごしか、それとも隣にいる女もそう思っているのであろうか。その答えは出ることなく、見据えた先に居たのは嫌な結末だった。
「ふふ、ねぇ、射的、やってみせてくれませんこと?」
何も知らない女が隣ではしゃいでいる。教えようとは思わなかった。知ったところで何も変わりはしないだろうから、多分…いや、きっとそうだ。変わるのは女の気持ちだろう。哀しみに包まれたまま一日を過ごしてほしくなかった。これほどこの女のことを愛していたのだ。勿論、今も、だが。
「いいよ、どれ?」
「あのお人形が…」
こういう類のものが女は好きなんだろうな、そう思って射的に挑む。不釣り合いだったんだろうか。いかにも遊んでいそうな風貌の俺と、身分の高そうな女。射的屋の旦那は俺と女を交互に見ていた。
人形が取れると女は微笑んで礼を言った。
嗚呼、もうすぐで、本当に、祭が終わってしまう。そうしたら嫌な結末が俺を襲う。俺だけでなく女にも襲いかかるだろう。それだけはなんとしてでも避けたいことだが、無理そうだ。
「もう、終わるのね」
祭が、そう女は付け足した。終わるのはきっと、祭だけじゃない。そうは言わなかったが、女はきっと分かっていたのだろう。そうじゃなきゃ付け足さない。きっと。
「最後に、」
最後にあるのは二つの意味。だけどそれも女は分かっていたのだろう。俺が思っていたよりも勘の鋭い姫だったようだ。
「風車、買って帰ろうか」
「…ええ」
「姫に似合う、紅の風車を」
祭火に 漂ふ君の くれなゐは 最期に渡らん 彼岸花とて
くれなゐ、かぜぐるま
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