たった数時間の中で繰り広げられる世界に涙するなんてことは、よく考えるとすごいことだと思う。現に、今正に俺の隣にいる彼女は目にうっすらと涙を浮かべながらエンドロールを見つめていた。

物語は常に主人公が悲劇に見舞われるというもので(愛した男が死ぬとかなんとか)、最後には主人公も死んでしまうというものだった。明らかにバットエンド、いかにもお涙頂戴な映画。そんなもんで涙している彼女はまさに「騙された人」であった。

さぁ、どうする。俺はどうするべきか。俺はこの彼女を慰めるべきか。それとも同じように涙を流して同感を装うべきか。さぁ、どうする。


「変な顔」


彼女が口を開いた。「変な顔」とは多分俺の事だろう。はて、おかしい。変な顔、してたかな?


「・・・どこらへんが?」
「ここらへん」


彼女が指差したのは顔全体だった。全部を総称して変な顔。そうかい。どうせ変な顔ですよ。


「・・・てか泣いてたじゃん、今まで」
「え?泣かなかったの?」
「うん?」
「・・・まじで?」
「まじまじ」
「・・・はぁ、」


なんで彼女は溜息をついているんだろう。あんなののどこが泣けるんだろう、ちくしょう。ふがいないぞ!俺!泣きたくなってきた。


「ま、いいや」
「・・・」
「何落ち込んでんの」
「いや・・・別に・・・」
「ほら、行こ」


彼女はソファからさっと立ち上がると俺に手を差し伸べた。俺はその手を取って立つ。情けねーまじで。それよりもどこに行くのだろうか、彼女は。


「どこ行くんだよ」
「え?散歩」
「さんぽ・・・」


もしもだよ、もしも。もしも、俺と彼女の名前が、さっき見たお涙頂戴の映画のようなエンドロールで流れてきたとしたら、俺は泣くのだろうか。彼女も泣くのだろうか。どうだろうか。俺と彼女(詳しくは彼女)は悲劇のヒロインになるのだろうか。どうだろうか。

俺は彼女の後ろを歩きながらそんなことを考えていた。


「変な顔」


そう、言われて顔をあげれば彼女が満面の笑みを浮かべていた。少なくとも、今は幸せだ。バットエンドじゃない映画に俺は向いているようだ、多分。





ゑいが

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