ジョバンニは黒く大きなシルクハットを深くかぶって、コートの内側のポケットから煙草を一本取り出して口に咥えた。そしてゴソゴソとズボンのポケットを探ってライターを取り出し火をつけた。煙草から出た灰色の煙がモクモクと空に上がっていく。その煙をシルクハットの中から見ていたジョバンニは、細い路地の壁に寄りかかって考えていた。

(さぁ、次は誰を…)

口から煙を吐きだす。煙草から出た煙と同様に煙は空高く上がっていく。左手でズボンのポケットを探りクシャクシャになった紙切れを取り出し広げる。紙切れには100人の人の名前が記されてた。そして上から順番に名前の上に線が引いてある。




ローカリー
スコッチ
サーベルト
メアリー
ドン・カータリー


「…ドン・カータリー…」

ジョバンニは紙切れの一番最後に記してある、線を引かれていない男の名前を呟きそして口から煙草の煙を長く吐き出した。

ジョバンニ…この男こそがこの国で唯一恐れられている男だった。ジョバンニが持っているリストには人の名前が100人記されていてそれがジョバンニのターゲットにした人間でジョバンニの標的だった。そしてジョバンニのリストに乗った人間は必ずジョバンニによって葬られる。何故こんなことを始めたのかというとそれはとてもくだらなく恐ろしい程のジョバンニの暇つぶしだった。葬った人間が100に近づくたびにジョバンニは腕をあげた。本当にそれが暇つぶしと呼べるかどうかは分からなかったが兎に角ジョバンニは強かった。武器は安っぽい銃が一つ。それだけだった。

そしてジョバンニは今日、100人目を葬る。100人目の名前は[ドン・カータリー]ドン・カータリーは、ジョバンニが20人目を葬った辺りからジョバンニのことを殺そうと派遣された政府直接暗殺部隊の一人だと噂されていた。

しかしジョバンニには自信があった。ドン・カータリーに殺されないという自信が。

理由はいたって簡単で明白な理由だった。



ドン・カータリーとはまぎれもなくジョバンニ…その人だったからだ。

ジョバンニは考えていた。
100人葬ると言われていたジョバンニ自身が100人目に相当していたと知った時のこの国の住民の反応を。

それはきっととても謎に包まれた笑いを残すだろう、と。


口に咥えていた煙草はすっかり短くなってしまっていた。ジョバンニは煙草を足元に捨て革靴で火をもみ消した。そしてコートの内側のポケットから安っぽい銃を取り出した。

(さよなら、“ドン・カータリー”…いや、ジョバンニ)




(080505)

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