『拝啓 竜様
はは。拝啓なんて言葉、俺には似合わねぇな。まったく。 元気にしてたか?俺はかなり元気だ。昔みてぇに体動かしたくってしょうがねぇ。 お前もそうなんだろう?お前の自慢の足を使いてぇんだろ? 俺達、巷じゃ有名な悪餓鬼だったもんな。 まぁ、過去を振り返るのはこのくらいにしておこう。本題に入る。
俺、結婚する。
どうだ?驚いたか?お前より先に結婚してやったぜ。ざまぁみろ。 してやったぜつってもまだ今は同棲中で、結婚は来週なんだ。 お前に自慢の嫁さんを見せてやりたくてたまんねぇ。 すげぇんだぜ、俺の嫁さん。 何がすごいかって俺らに負けないくらいの腕よ。 すげぇ喧嘩強いんだ。多分俺らより強いかも。 まぁでも、竜のあの足蹴りに敵う奴はいないけどな。お前最強だったもんな。 まぁ俺も負けちゃいねぇくらい最強だったけどな。 あ、話しそれちまった。それでな、俺の嫁さん、料理が糞上手いんだ。 俺の嫁さんの料理の右にでるやつはいねぇ。これは堂々と言える。 そして何よりベッピンだ。すげぇ美人。 俺、昔っからベッピンさん捕まえるの得意だったよな。はは。うらやましいか? 俺が言いたいことはこの嫁さんを一生をかけて大事にするっていうことだ。 親友のお前に誓う!!!・・・なんてな。 とにかく、結婚式絶対来いよな。強制だからな。 しょうがないから友人代表のスピーチはお前に任せてやる。 どうだ?嬉しいか?嬉しいだろ?
そうそう。俺、お前に言いたいことあるんだ。 すげぇ大切なこと。 何だと思う? 当ててみろよ。ま、竜のその頭じゃわかんねぇか。はは。 竜、昔っから頭は馬鹿だもんな。・・・ま、人のこと言えねぇけどよ。
あのな、俺、お』
そこで見慣れた文字は途切れ、小さな赤い液体が点々とついていた。 それが何なのか、考えなくても分かる。
カランとグラスに入った氷を鳴らし、グラスに残っていた酒を一気に飲み干した。強い酒の所為なのか、頭がグラリと揺れる。視界が歪む。目頭が熱くなる。しょっぱいものが溢れてくる。これはなんだ、あぁ、涙か。そう認識するまでに時間がかかる。 頭上では軽快なジャズが俺を誘う。氷の音が俺を溺れさせる。
「なぁ、」
つうっとしょっぱいものが頬を伝う。
「最強のくせに 死ぬなんて可笑しいだろ」
Letters
死ぬ直前に書いた手紙が自分宛だったなんて、それほど悲しいことはない。 (080327)
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