前にもこんな事があった。
自分の周りにあるすべてのモノが息をしている。 静かに静かに呼吸を繰り返している。 俺はそれを理解してそこに立っている。 少しずつ、少しずつモノは俺を核心へと近づけてそして言う。
“見えるモノがすべてじゃない”
俺はその言葉を理解して綺麗に飾られた世界を斬る。 モノを斬った代償に俺に降りかかってくるのは赤い液体。 全身が真っ赤に染まってこれが血液だと理解したときにはもう遅くて、
何をしているんだ
と、自己嫌悪した。
今の状況は丁度それに似ていた。
俺がイカレているのか、相手がイカレているのかは分からない。 相手は俺に傷をつけようと斬りかかってくる。 俺は相手の攻撃をよけるべく体をかわし、それから同じように斬りかかる。
イカレているのは両方だ。
傷はつけられることのなくただ避け、斬りかかり、の繰り返し。 これ以上無意味なことを続けていても無駄だと分かっていた。 それは相手も同じはずだ。
上空で鳥が鳴いた。
俺はやっちまった。上を向いてしまった。 相手は待ってましたとばかりに俺の隙をついて斬りかかる。 スッ、っと肉が斬れるのが分かった。と、同時に血液が噴出した。 視界がグラリと揺れて立っていられなくなった。 傷口を手で押さえると手にはベッタリと血液がついていた。
赤かった。自分の血は赤かった。
頭がグラリと揺れる。 血液の出しすぎかと思ったが違った。 相手が俺の頭を柄でおもいっきり殴っていただけだった。
あァ、もう駄目かァ、
思った時だった。 音が何も聞こえなくなって聞こえるのは小さな胸の鼓動。 周りのモノの呼吸が聞こえた。 俺と周りのモノだけの存在しか確かめられなかった。
「 、」
相手が何か口を開いたが聞こえなかった。 モノの呼吸がが邪魔をする。 ・・・いや・・・邪魔しているんじゃないのかもしれない。 殺れということか。 殺れということなのか。
そうだ、まだだ。 まだ死んでない。
やってやる。 俺は負けない。
ある剣士の生
き様とその心 意気は誰にも 負けないくら い強く儚いも のだった。
立ち上がった剣士は今じゃ最強の名を持っているらしい。しかしそのことは誰も知らない。 これはただの御話だから。
(080413) |